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　通関士試験を始めとして国家試験勉強を受験する際に、通信教育講座や講習会等に頼らず独学で行うということも選択肢の一つではないでしょうか。そこで独学で受験学習をする方々は、最低限、次のような点について留意することが必要です。

  1. 目的の明確化（意思決定）
    　通関士試験の受験学習を独学で行う方は、「通関士試験を受験して、必ず合格する。」という学習目的を明確にする必要があります。
    　この決定した明確な目的に向かい、必ず合格するのだという確固たる意思をもって、不断に且つ着実に学習を続けることによって的確に基礎知識を習得し、更に過去問題集等の解答練習を行うことにより実力の養成と伸長を図るのです。
    　「ひとつ、通関士試験でも受験してみようか。うまくいったら合格するかも知れない。」等というような中途半端なことを目的として学習に取り組んだ場合には、学習中に少しでも解らないような個所が出てくると、そこで投げ出して、挫折してしまうおそれがあります。
  2. 己に克つ（不断の努力）
    　独学というのは、言うは易く、行い難い学習です。
    　独学であるので、身近には、解らない個所について教えを乞う講師等もいないし、相談しあうような仲間もいないという学習環境の中に置かれることになり、学習中においては、学習方法に誤りがあるのではないか、他の学習者よりも学習が遅れているのではないか等の悩みが常につきまといます。
    　こうした学習環境の中で、通関士試験の合格に向けて不断に且つ着実に学習を続けるためには、強固な克己心が必要であり、強いて言えば、『悪魔（あくま）』にならなければなりません。

    　あくまの『あ』は、「焦るな！諦めるな！慌てるな！」です。初めて行う関税に関する法令等の学習です。直ぐに解らなくても当然であって、焦らずに、諦めずに繰り返して参考書を読み込めば、必ず理解することができます。これは、試験に臨んでも同じです、決して慌てて諦めてはいけません。

    　あくまの『く』は、「くさるな！」です。思うように学習が進捗しないからといってくさってはいけません。いま解らないことも、もう少し参考書を読み込めば必ず解るようになり、次の段階に進むことができます。

    　あくまの『ま』は、「負けるな！」です。独学で最も怖いのは、「自己の怠け心に負けること」であって、初めに考えていた程に理解することができず、思う程に学習が進捗しないとなると、怠け心が起こり、途中で学習を投げ出したくなりますが、この誘惑に負けてはなりません。このような場合には、自分と同じように独学で学習している競争相手も、同じように苦しんでいるのです。

    　「最後まで頑張れ、己が苦しいときは、競争相手もまたそれ以上に苦しいと知れ。」という言葉があります。自分の怠け心に勝たなければ、競争相手に勝って、合格することはできません。
  3. 受験参考図書の選択
    　通関士試験の受験学習を独学で行う方にとって、最も重要なことは、どの受験参考図書を選択するかです。
    　通関士試験の受験は、教科書の他に大学受験参考書を利用して学習し受験する大学受験とは全く異なります。
    　通関士試験の受験学習において、真の教科書（テキスト）は、関税に関する法令等であるので、こうした関税に関する法令等を収録した法令集を受験参考書として問題集とともに選択します。
    　また、通関士試験の試験問題は、毎年４月１日現在の関税に関する法令等に基づいて出題されますが、この関税に関する法令等は、主に毎年４月１日に改正されるところから、こうした法令改正内容が受験参考書及び問題集に完全に反映、収録されていることが必要です。
  4. 短答式問題の解答練習（参考書と問題集の併用）
    　まず、自ら学習進行管理表を策定して、その学習進行管理表に基づいて学習をすすめるよう心掛けなければなりません。また、解答練習によって、苦手な又は理解不足な個所を把握して補正を図りたいものです。
    　参考書を繰り返して読みながら、その解説文に引用されている関税に関する法令条項を法令集で確認をして、基礎知識を確実に習得します。このようにして、基礎知識の習得を終えたならば、次に、問題集を解いて、短答式問題の解答練習をします。
    　この解答練習において、解答することができなかった個所又は誤った解答をした個所については、参考書に戻って、参考書の解説を読み返した後に、再び問題集を解いて、短答式問題の解答練習をするということを反復して、正しい基礎知識を確実に習得します。
    　なお、通関士試験の受験科目である関税に関する法令の内容について解説をしている参考書においては、関税に関する法令等の条項の規定に従い、先ず原則を解説した後、次いで特例について解説をしてあるので、基礎知識の習得においては、二色のマーカーを利用して、原則の取扱いと特例の取扱いをマーカーの色を変えてマークすることにより、確実に分けて習得するのがよいでしょう。（一色でマークすると、復習する際に改めて、原則と特例の区分をしなければならないことになります。）
    　また、問題集を利用して短答式問題集の解答練習をする際、漫然と解答練習するのではなく「常に通関士試験の会場にいる」と考え、通関士試験と同じように１問を３分以内に解答することを心がけ、その短答式問題が何を問うているかを明確にするために、問題の柱書にある、この記述は「？関する」という語句の前の「？」部分を○で囲むとともに、答えは「正否」のいずれを求めているかを明確にするために、「正否」のいずれかを○で囲んだ後に、選択肢の文章の正否を検討していきます。（このように問題趣旨等を○で囲んでおけば、全問、解答した後に、その正否の見返しをする場合に、容易にかつ短時間で済ますことができます。）
  5. 空欄記述式問題の解答練習
    　受験学習を独学で行う者が、最も苦手とするのは、平成１３年の通関士試験から出題されるようになった空欄記述式問題の回答です。
    　この空欄記述式問題の回答においては、関税に関する法令等の規定の内容に即して、正しい語句を問題文の空欄個所に記述しなければならないが、この問題について正解するためには、先ず法令集を利用して主要な条文を精読するとともに、次に参考書によりその規定内容を理解する必要があります。
    　このようにして、主要な条文を精読し、参考書により規定内容を理解しましたら、次に、その主要な条文ごとに、毎日反復して記述練習をします。
    　なお、平成１７年の通関士試験の出題実績から推しはかると、空欄記述式問題が出題されるようになって既に５年を経過したことにより、これからは、過去の出題例の一部を修正したものなどの出題も多くなることが予想されるところです。このため、問題集等に収録されている空欄記述式問題をコピー等した上で常時１問又は２問ずつ携行し、毎日の通勤、通学の往復時間、また、勤務先の昼休時間や休憩時間において、「ここは通関士試験の会場である」と考え、１問を９分以内（関税法の試験時間は、１０５分です。｛空欄記述式問題５問×９分＝４５分｝＋｛短答式問題２０問×３分＝６０分｝。通関業法の試験時間は、４５分です。｛空欄記述式問題２問×９分＝１８分｝＋｛短答式問題１０問×３分＝３０分｝。）に正しい語句を問題文の空欄個所に記述する練習を反復して行います。（空欄記述式問題の記述練習は、問題と正解をコピーした紙さえあれば、場所を問わず記述練習をすることができます。）
  6. 質疑応答システムの利用
    　受験学習を独学で行う者が、学習中に解らなかった個所又は疑問が生じた個所等について、ホームページや掲示板等によって照会すれば、回答を得られるものもあるので、検索してみるといいと思います。ｗｅｂサイトを利用することにより、そのｗｅｂサイト上に公開されている他の質疑応答も閲覧することができるので、これらの質疑応答も必ず読んで、自己の受験学習に役立つものは、基礎知識として習得するようにします。
  7. 得意受験科目
    　通関士試験の通関実務問題として出題される税額等計算問題、課税価格計算問題、輸出申告書作成問題、輸入申告書作成問題については、確実に計算練習と申告書作成練習さえすれば比較的短期間に正解することができるようになるので、計算練習と申告書作成練習をして、得意な受験科目の一つにするまでにします。
    　また、通関業法は、通関士試験の受験科目である他の法令と異なり、比較的に条文が少ないので、これについても、得意な受験科目の一つにするまでに学習します。 　このようにして、計算問題、輸出入申告書作成問題及び通関業法を得意な受験科目にできれば、出題範囲が広く、かつ、難度が高いとされる関税法等の学習に全力を傾注することができます。
    　しかし、ここで留意しなければならないのは、通関士試験においては、通関士試験の受験者であれば、誰でもが得意受験科目とすることができる計算問題、輸出入申告書作成問題及び通関業法について失敗をした場合には、他の受験者に大きな差を付けられることになるので、不断に且つ着実に税額、課税価格の計算及び申告書作成の練習を行うとともに、通関士国家試験においては慎重に解答して、必ずチェックと検算をするように努めなければなりません。
  8. 模擬試験受験への参加
    　若干の受験料を負担しなければならないことになりますが、試験会場の雰囲気に慣れ、問題解答における時間配分を確認するとともに、それまでに学習し、養成し伸長してきた実力をためすためにも、教育機関が実施する模擬試験を受験して、苦手又は理解不足な個所を的確に把握して、通関士国家試験までの間に補正を図ることとした方が有利となるでしょう。



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